トピックス・コラム
新型コロナウイルス感染拡大への対応:今こそ、企業のリスクマネジメント・危機管理チームが取り組むべきこと
3月9日現在 国内感染者は1,000人を超え(クルーズ船を別計算して報道している例もありますが、既に国内に入ってこられているので別計算は無意味です)、つまり、日本人126,010人に一人が感染しています。
これに対して、1人の感染症患者から何人に感染させるかの試算は、1.4~2.5人ですので、本日現在で潜伏期間の人も入れたら3,500人以上は感染しているはずですが、それでもまだ、日本人36,003人に一人の感染です。まだそれほど騒ぐ話ではないかもしれません。
怖いのは、感染者が500,000人に広がったときです。252人に一人が感染する計算となりますので、中規模以上の組織であれば確実に感染者が発生します。
対岸の火事と考えず、今の段階で、「組織内に感染者が発生した場合」と「来訪者、建物への入場者に感染者が発生した場合」の想定をしておくことが重要です。
組織内に感染者が発生したとき
【対応原則】
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事業場・職場内での感染拡大防止のため、次の対策について準備し、組織内に感染者が発生した際には速やかに実行する。
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「感染情報の収集・発信」
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「接触者の特定および勤務の対応」
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「汚染箇所の特定・消毒」
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医療機関や保健所等から指示があった場合は、その指示に基づき感染拡大防止措置を行う。
感染情報の収集・発信
保健所等で感染者が判明した時には、感染者の住所地を管轄する保健所から当該感染者の勤務先を管轄する保健所を通して会社に連絡が入ります。(当該感染者本人やその家族からも会社に連絡が入るでしょう。)
(対応例)
本人または保健所等から従業員の感染が確認された旨の連絡があった場合、総務部門が集約して以下にルートで連絡し、感染者が発生した旨を周知し、感染予防・感染拡大防止に努めるものとします。
感染判明時の初動対応
感染者が発生した職場では、初動対応に入ります。
(対応例)
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感染が判明した場合、職場の同僚等に感染者の行動範囲、接触した者の確認を行う。
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感染者が勤務するフロア(部屋・間仕切り範囲)内の従業員は、感染者の行動範囲および接触者が確認されるまで業務を停止し、確認後はマスク等の感染拡大防止対策を実施したうえで、なるべく人との接触を避けて帰宅する。
濃厚接触者への対応
管轄保健所の職員が職場を確認しにきます(換気の状況等)。感染者からの聞き取りや会社から得た座席図などの情報から(会社内で職場従業員への直接のヒアリングは行わず、担当者に確認)、濃厚接触者※を特定し、濃厚接触者と連絡をとり健康状態を確認します。
(対応例)
感染者の症状発生前後の行動を確認し、以下の基準を目安に感染者の咳・くしゃみなどの症状や接触度合い、部屋の換気状況に応じて濃厚接触者を特定する。
①2メートルの範囲で1時間以上接触した者を基準とする。(基準は管轄保健所に確認する)
②フロアに勤務する全員を一律に濃厚接触者とはしない。座席が近い同じ「島」の従業員が濃厚接触者になり得る。同じ会議にいた者も①の基準で濃厚接触者になる。
③換気の状況・感染者の咳など実態を確認して個別に判断することになる。
濃厚接触者に対しては外出の自粛をお願いする(指示や強制ということはない)
※濃厚接触者に関する厚生労働省の見解はこちらをご確認ください。
保健所では、今のところ感染者の勤務先名の公表はしない(所在地の都道府県まで)としていますが、これまでの事例ではネットであばかれたりしていますので、事業者として公表するか否かの判断もしなければなりません。これまでの事案では、「なぜ熱があったのに会社に行かなければならなかったのか。」など会社の姿勢を問われる書き込みが集まったものもありますので、今の時点での会社の従業者の感染症対策方針も重要となるでしょう。
接触者の勤務方法と感染者が発生したフロアの管理
次接触者の勤務方法と感染者が発生したフロアについては、次のような基準に従って管理する必要があります。
(対策例)
【濃厚接触者の勤務について】
濃厚接触者は感染者との最終接触日から14日間、自宅待機とする。
※テレワーク勤務が可能な場合には、それを認める。
緊急を要する時などやむを得ず出社する場合は、次の事を前提として、他者と接触しない別室等の環境が用意できる場合に、その場所での勤務に限り許可する。
- 保健所から外出自粛の要請がないこと
- 発熱や咳などの症状がないこと
- マスク等の感染拡大防止対策を行うこと
【感染者が発生したフロアでの勤務について】
感染者が発生したフロア(部屋・間仕切り範囲)内に勤務する者で濃厚接触者以外の者は、消毒作業終了後、翌日より勤務を行うこととするが、始業前の健康チェックを厳密に行い、体調に異変を感じた場合は早急に帰宅し、自宅待機とする。
※テレワーク勤務が可能な場合は、それを認める。
【汚染箇所の消毒】
消毒は、汚染個所の消毒方針等が厚生労働省から発表されるまでの間は、原則として専門業者に委託する。(管轄保健所に確認する)
- 感染拡大時には実施までに時間がかかることが考えられるため、あらかじめ感染が発生した場合の依頼先(各地域のペストコントロール協会等)を決め、施設の図面の準備、消毒実施時の対応方法を確認しておくこと。
消毒は以下を参考に実施する。(管轄保健所に確認する)
- 消毒をする箇所。
感染者のいるフロア(部屋・間仕切り範囲)内で
感染者の自席周辺、感染者が手を触れる場所(ドアノブ、手すり、スイッチ、ボタン等)、会議室等飛沫が飛んだ可能性があるテーブルなど、床は不要
共用部分で感染者が手を触れる場所(ドアノブ、手すり、スイッチ、ボタン等)を特定し消毒
※共用部の消毒は日々の清掃を実施していれば不要と考えられるが、管轄保健所等に確認して必要に応じて実施する。
食堂がある場合でも、日常的な消毒の状況を予め確認できていれば特別な消毒は必要ない※バイキング方式はトング要注意、共用する調味料入れも要注意
トイレ(便座・ふた・レバー)、休憩所、喫煙所(テーブル)、階段、通路、エレベーターのボタン、自動販売機のボタンなど
【テレワークが困難な職場におけるBCP対応】
入居ビルの中で感染者が出ると、フロアの除菌が終わるまで居室に入れなくなってしまいます。「テレワーク対応ができない業務の洗い出し」「非テレワーク勤務者のためのクリーンルームと相当量の高濃度アルコールまたは次亜塩素酸の確保」をも検討が必要です、特に以下に当てはまる職場については個別検討が必要だと考えます。
●セキュリティを重視する職場等で、換気性が低く閉鎖的な環境である場合
●設備等によって「次亜塩素酸による消毒」が不向きな場合
●消毒が完了するまで業務を停止することが困難な場合(災害等の避難場所も含む)
以上です。
皆様の健康をお祈りしております。
2020.3.9 株式会社シーピーデザインコンサルティング 鈴木 靖